バランスシート不況 2012 10 14

 バブル経済が崩壊すると、
人々は、「三つの過剰」に気づく。
「過剰な設備投資」、「過剰な雇用」、「過剰な債務」。
 こうした「三つの過剰」を解消する過程で、
人々は、バランスシートの劣化に気づく。
 このような「複合不況」に対して、
金融緩和を繰り返すが、
やがて、人々は、効果が不十分であることに気づく。
ましてや緊縮財政は逆効果であったことを経験で学ぶことになる。
 「バランスシート不況」については、
わかりにくいと思いますので、説明します。
 「バブルに乗って借金までして投資に走った人々が、
バブルの崩壊によって資産価格が暴落すると、
負債だけが残り、債務超過という状況になる。
資産より負債がはるかに大きくなるからだ。
 そのような状況に置かれた企業や個人は、
どのような行動を取るかというと、
当然のことながら、毀損したバランスシートを修復するため、
必死に債務を減らすようになる」
(参考文献 「世界同時バランスシート不況」 リチャード・クー 村山昇作)
 先日、「サッチャー時代 2012 9 23」という文章を書きましたが、
これは、今の欧州にとって、参考になるだろうと思い書いたのです。

サッチャー時代 2012 9 23
 イギリスのサッチャー元首相は、
自由主義陣営の旗手というイメージが強く、
歴史的にも、自由主義陣営の旗手として、
人類の記憶に残るでしょう。
 しかし、映画「マーガレット・サッチャー」では、
サッチャー時代の経済にも焦点を当てています。
 女性でありながら、
強い指導者として首相に就任したサッチャーは、
強力に市場改革や市場経済を推進します。
いわゆる「新自由主義的な経済政策」を実施したのです。
 しかし、結果は、失業率の大幅な上昇、企業の相次ぐ倒産など、
「サッチャー不景気」の様相を呈していました。
側近からは、「不景気なのに、歳出削減をするのか」とまで言われました。
サッチャーの支持率は大きく低下し、政権の危機に陥りました。
 そこへ、アルゼンチンの軍事政権が、
イギリス領のフォークランド諸島を占領したというニュースがありました。
 当時のアルゼンチンの政治情勢としては、
軍事政権が、民衆の不満をそらすために、
フォークランド諸島問題を煽ることで、
国内の反体制的な不満の矛先を逸らせようとしていたのです。
 サッチャーの側近からは、
「本国から2万キロも離れている。
そんな遠くまで艦隊を送るのは難しい。
財政的にも、そんな費用は出せない」と言われ、
アメリカの国務長官からは、
「フォークランド諸島にイギリス人は少なく、島は経済的な価値が低い」と忠告されました。
 しかし、サッチャーは、開戦を決断しました。
結果は、イギリスの勝利となると同時に、
経済は、空前の好景気となり、サッチャーの支持率も急上昇しました。
これは、戦争経済というケインズ流の景気刺激策となったのです。
 こうした「サッチャー景気」により、
サッチャーの政治的な立場は、強固なものとなり、
なおかつ、自由主義陣営の旗手としての原動力となったと思います。


































































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